一つ屋根の下 ギャグにしようとしたら下ネタになりました。(お前) ということでワンクッション。 よろしければ下へスクロールをお願い申し上げます。(土下座) 「あ゛ーあづい、暑いぃ」 「脱ぎますか?」 「これ以上何を脱げと・・・ってお前が脱ぐのかよ!そんな肌色求めてないよ!逆に暑いわ!」 「そそられません?」 「そそりはしないけど、引きはしたな。振り向いたら自分の同居人が真っ裸・・・俺のガリガリくんも真っ青だ。せめてズボンは穿いてくれ」 「もともとそれ青いじゃないですか。そうですかね、自然でしょう?」 「それなんて原始時代だよ、まるで自分が世間様のスタンダードのような顔で訝しむな変態裸族。あとその笑顔のキラキラ効果は主に地球温暖化の原因だから止めれ」 「ああ、蕎麦が茹で上がったみたいですね」 「聞けよ!スルーしたままキッチン行くなよ!」 「あ、綱吉くん、今はこっち見ないでくださいよ、見物料とりますよ」 「永遠に見たくないしな!何の見物料だよ、俺のメンタルへの損害賠償が先だろ!?」 「はだかえぷろん。今なら新婚さんごっこももれなく付いてきます」 「そんな余計なオプションいらねぇー!!!俺はズボンを穿けと言ったんだ!だいたいお前に裸エプロンの何が解るんだよ!?」 「美尻、ですかね?」 「おおお俺に背を向けるな!見せるな!何かはみ出して見えてるしぃ!?」 「クフフ前から見たいんですか、仕方ありませんねぇ」 「仕方ないのはお前の頭のパイナップルだ!ぎゃぁあ!振り返るなぁぁぁ!!!」 骸が着ている綱吉サイズの黒いエプロンは、当然ながら彼よりも背の低い綱吉のものであるから、その裾は彼にとっては短いもので。 「な、何て不愉快なチラリズム・・・!こんな不快なもの見たことねぇ・・・」 「毎晩見てるじゃないですか」 「そんなものお日様の下で見て何が楽しいんだよ!?」 「夜に見ると楽しいんですね」 いや確かに楽しませてもらってますが・・・って待て俺、そっちはお花畑だ。 一瞬でも同居人の言葉に頷きかけて、綱吉はすぐに倍速で頭を振った。 ************ 真夏の日差しが、勢い良くコンクリートに跳ね返る昼下がり。 学生で溢れかえる大学のカフェテリア。 キャンパスに在籍する学生に比して、その半分程度の席しか用意されていないその場所は、既に9割がた埋まっている。 そんなカフェの一角に見慣れた癖毛を見つけて、凪は入り口の食券を買わずに窓際の一人用テーブルに近づいた。 一面ガラス張りになっているせいか、今の時期の窓際は明るいを通り越して少し暑い。 けれどそんなことを気にも留めずに、綱吉は金茶の髪を時々ひょこひょこ揺らして手元の資料を真剣に眺めている。 何を見ているのかと覗き込めば、古びた人形や独特の雰囲気を放つ古物が、薄暗い木造の建物の中に整然と並べられている写真が眼に入る―――彼女の綱吉に関するパーソナルデータに寄れば、彼はこういった不気味なものが得手ではなかった。 「ボス、何を調べているの?」 「んーエプロンを供養してくれる神社仏閣の類がないか検討しているんだ」 まるで、凪がそこにいることを知っていたかのように自然に応えて、綱吉は顔を上げることなく遠目をしながら、無気力に紙をめくる。 彼の答えの意図がつかめず、彼女は愛らしく小首をかしげて問いを重ねた。 「エプロン?」 「諸々の事情があって、着れなく・・・いや、触れなくなったんだ」 あんなのが付着したエプロンなんて産業廃棄物より性質が悪い。 「?」 「凪は知らなくて良いんだよ?」 にこぉ。 まるで、自分の子どもがかけっこで一番になった親のような満面の笑みで、綱吉は疑問符を飛ばしながら懸命に理解しようとしてくれている凪の頭を撫でた。 そして自分の横の椅子においていた鞄をどけると、そこに座るように彼女を促して手元の資料を片付ける。 「あれ、そう言えば凪、ご飯は?」 「まだ、買ってない」 「そっか、俺も。じゃあ食券買いに行こう」 綱吉はそう言って立ち上がると、ごく自然に凪を人波から庇いながら人でごった返すカフェを歩いていく。 その背中を見ながら、彼女は、同じ講義を取っている幾人かの知り合いが綱吉を評して「手馴れた男」と言っていたのを思い出した。 基本的に綱吉は人を扱うのが上手い。 相手に合わせて対応の仕方を変えるのが、絶妙に上手い。 だから誰しもが、それぞれの沢田綱吉に対するイメージを持っている。 逆に言えば、綱吉が素で接する人間は限られていた。 その最たる例が、彼が不本意ながら同居している人間であると、綱吉自身を含め誰も認めたがらないだろうが。 「・・・ずるい」 「ん?何か言った?」 「ううん、何でも、ない」 人ごみに紛れた呟きは、彼女にとって唯一無二の主人に向けられた対抗心。 「凪は何にするの?」 「ボスは?」 「カレーかな、暑いし」 「・・・ざる蕎麦」 「あ゛ー蕎麦ねー」 「?」 券売機の前で微妙な表情になった綱吉は、昨日の変態の変態による些細な狂乱を思い出して思わず、 「あ」 「凪、冷やし中華は嫌い?」 カレーの真下にあった冷やし中華のボタンに自然と指が伸びていた。 「好き」 「ホント?あ、当たり前だけど俺の奢りだから」 「ありがとう、ボス」 「あははは・・・ごめんね」 「お蕎麦、嫌い?」 「うん、一時的に」 「骸様、また何か?」 「―――・・・聞いてくれよ凪ぃぃい!!」 「沢田ー券売機の前でセクハラしないでくださーい」 「うるさい俺の癒しに口を挟むな」 がしりと凪の細い肩を掴んだ綱吉は、後ろに並んだ同じゼミの人間のヤジに据わった目つきで返し、縋るような涙目で凪を見遣る。 そんな様子から大体のことを察して、凪はあちこちはねた金茶の髪を撫でてやった。 「振り返ったら脱いでたんだよ。なんかよく解んないけど、脱いでたんだよ・・・」 「・・・脱いでたんだ」 「脱いでたんだよ・・・まぁそれは良いんだ。いや断じて良くないけど。むしろ最近それに慣れ始めているのが怖くて仕方がない」 はぁぁ、と缶コーヒーを握り締めたままテーブルに沈んだ綱吉は、空調から吹き付けてくる冷房に心地良さそうに眼を閉じる。 それがまるで猫のようで、凪の口元にかすかな笑みが浮かんだ。 次の講義が始まったからか、すりガラスの向こう側の廊下は静まり返っていて、ゼミのルームにはエアコンの音しかしない。 「ああぁぁあぁ・・・なんであんなのと同居してるんだろ」 「いや?」 「あー、いやとかそういうんじゃなくて、多分問題はそれでもあの変態を容認してる俺のドM精神にあるんだろうなぁ」 空になった空き缶の底を軸に、綱吉の手がいじけた内面を示すようにぐりぐり回る。 珍しいくらい素で話しているらしいその様子に、凪は面映い漣が自分の中でゆるゆると波打っているのを自覚した。 「絶対顔に騙されてる、ぜーったい騙されてる。だいたいあの顔が卑怯なんだよ。つか、あの顔で差し引いても足が出るキャラクターってどうなの」 「うん」 どうしよう、少し嬉しい、ような気が、する。 綱吉がいつも凪に見せる姿は、まるで兄のようだった。 けれど、骸の話をしているときの彼は、それよりももっと凪の近くに立って話してくれているようで。 それだけで彼女の小さな胸の中は幸福だった。 別に綱吉に振り向いて欲しいわけではなくて、ただもう少しだけ彼の傍に。 「凪?何か嬉しそうだね」 「うん」 「・・・?まぁ、嬉しいのは良いことだけど・・・」 何に喜んでいるのか、イマイチわからない。 そう顔に書いて、綱吉は再び顔を机に伏せた。 綺麗な左巻きの旋毛に視線を落とした凪は、囁くような声音で空気を揺らす。 「ボス」 「んー?」 「また、お話、聞かせてね」 「えー?骸の?」 「何でも、いいよ。ボスと話すの、好き」 「・・・凪は可愛いなぁ」 訥々とした守護者の言葉に、彼は恥ずかしそうに笑いながら微笑んだ。 *************** 「・・・骸」 「はい、どうかしましたか、綱吉くん」 ついに家主が耐え切れなくなって稼動することになったクーラーが、静かな音で今年一番の熱帯夜を壁の向こう側に追いやって一時間。 セミダブルに横になった綱吉は、ご満悦の表情で自分を抱きしめている男の名を呼んだ。 落ち着いたバリトンは、眠気に蕩け始めた耳にとてもやさしく響く。 「俺さぁ、割とまともな時のお前は愛してるんだけどなぁ」 語尾が甘くかすれた素直な言葉に、明かりの落とされたうす暗がりで、オッドアイは僅かばかり意外そうに開かれた後、穏やかに笑った。 「僕は綱吉くんの全てを愛してますよ」 「・・・俺がその台詞を言うと、失うものがあまりに多すぎるよな。主にモラルとかモラルとかモラルとか」 「クフフフいつか言わせます」 「いつか・・・いつかね」 それなら、お前、それまで俺の傍にいなきゃじゃん。 眠りに落ちる間際の呟き。 それが想像以上に嬉しくて、骸は宝物を抱きしめるように長い腕に力を込めた。 「ずっと、いますよ」 fin. Rivedersiの零様に、相互記念として捧げさせていただきます、ムクツナ←髑髏でギャグ甘(のつもり)でございます。 リクエストを戴いてから、随分と経ってしまって申し訳ありませんでした・・・!!! そしてなによりギャグの定義を著しく履き違えていてすみません。。。 何故彼があの時エプロンを着たのか、それは嘉月にもわからないという・・・(その時点で迷宮入り) ああああ、あんなに素敵な骸様を描かれるお方になんてものを・・・!!! 零様、お持ち帰り自由ですので、返品も自由ですので!煮るなり焼くなり焚きつけるなり、お好きになさってくださいませ!! これからも、どうかこれに懲りずによろしくお願いします。。。(平伏) 相互リンク、本当にありがとうございました!! Back |