愛してるって、言わなきゃ襲う −後編−

※うっかりR-15(もしかしたらR-18)です。
苦手な方は、お戻り下さい。
いやん、な感じにねっちょりしているかも知れません。














夜の帳がボンゴレの本城を覆って数時間後、そろそろ日付も変わろうかという時刻に、長い廊下を足音も立てずに歩く人影があった。
照明が絞られているにもかかわらず、その人影の銀の髪は月光を吸収したかのように煌めいている。

ボンゴレファミリーの闇、ドン・ボンゴレに次ぐ地位に立つ男が統括する 暗殺部隊ヴァリアー。
そのNo.2 を務めるスクアーロは、久々の休日の、しかも夜も更けた時刻になって本部にやって来た。
これが仕事がらみの呼び出しだったら、もっと彼の歩調は荒いものになっただろうが、この呼び出しはボンゴレ10代目のプライベートな呼び出しである。

本城の綱吉の私室の、4つある窓のカーテンのうち、一番右のカーテンだけ閉められていない。
それは、セキュリティ上私的な携帯電話を持つことが出来ない綱吉の、スクアーロを呼ぶ合図だった。

―――愛しい恋人の呼び出しに、嬉々として応ぜぬ男があろうか。
それが例え、一ヶ月ぶりに与えられた休日の真夜中だったとしても。

休日が与えられたのが一ヶ月ぶりなら、綱吉と会うのも一ヶ月ぶりなのだ。
そう考えると、口元が自然と緩んでしまうのも仕方がないことだろう。

意識して無表情を取り繕いながら辿り着いたボスの居室。
いつも大きな樫の扉の両サイドに立っている護衛の姿は見えない―――また人払いをしたらしい。
何度も危険だから止めろといっているが、スクアーロが来てくれるから大丈夫、と返されてしまう。

俺が緊急で本城から離れていたらどうするつもりなんだ。

そんな風に思ったこともあったが、よくよく考えてみると、あの完全無欠のアルコバレーノが一瞬たりとも綱吉から目を離すはずがないのだ。
今だとて、きっと、何かしらの防衛対策が布かれているのだろう。

取り留めもなくそんなことを考えながら、スクアーロは室内へと滑り込んだ。
それと同時に、向けられた殺気に、一瞬で戦闘態勢に入る。

けれど、その殺気はすぐに霧散して、その代わり少し間の抜けた声が、部屋の奥から聞こえてきた。

「―――なんだ、スクアーロか」
「うお゛ぉい、人を呼び出しといて、その言い草かぁ?」

悠々とCASANOVAのソファに腰掛けていた綱吉は、呆れるようなスクアーロの声に、手にした毛糸の手袋を終いながらクスクスと笑う。

「いやぁ、最近ここまで忍び込んできてくれるような、腕の立つヒットマンがなかなかいないみたいで。久々の侵入者かなーと」
「侵入されてなんでそんなに嬉しそうなんだ、お前は」
「あははは、最近俺が出なくてもお祭りが終わっちゃうから、退屈なんですよ。―――さて、ま、そんなことはどうでも良いから、こっちに来て。あ、そうだ」

促されるまま、一級品の本革ソファに長身を沈めたスクアーロに、綱吉は軽く口づけた。

「お帰りなさい、スクアーロ。一ヶ月の任務お疲れ様」

それはそれは綺麗に微笑む綱吉を見て、スクアーロの白皙の頬が一瞬にして紅潮する。


基本的にスクアーロは綱吉の仕草全てに弱いのだが、中でも笑顔と泣き顔は格別に弱かった。
見た瞬間、頭の動きが一瞬止まってしまうくらいに。

そんな恋人のヘタレ具合など疾うに承知している綱吉は、顔を赤くしたスクアーロを見て苦笑すると、ソファから立ち上がって、ミニバーの戸を開けた。
手にしたのは、D.R.Cの当主がグレートビンテージと讃えた、“1993 D.R.C. ロマネコンティ” 。
綱吉はそれほど酒を好む人間でもないので、どれほど高価なワインやらブランデーを贈られても、幹部が飲むか、乱闘の挙げ句ボトルを割るか、スクアーロに流れるかのいずれかにしかならないのだが。

「お゛ぉい、そりゃ、うちのボスが寄越したもんじゃねぇか」
「うん。でも、ほら、俺、あんまりお酒の味わかんないですから。なら、味の分かる人に飲んで貰った方が良いかなって」
「バレたら俺がアイツに殺されるんだぞ?」
「その時は一緒に謝ってあげますよ。ほら、グラス」

一緒に飲む気らしい綱吉から、グラスに透き通った深紅の液体を注がれる。
珍しいこともあるモンだと思いながら、芳香に誘われるようにワインに口を付ければ、ベルベッドの舌触りと上品な味わいが口内を満たした。

「―――飲みましたね?」
「は?」

どこか楽しそうな綱吉の声に、怪訝そうな声を出した瞬間、スクアーロの視界がぼやけた。
力の抜けていく体を必死で支える男を前に、ゆらり、と綱吉が立ち上がる。
そして、ゆっくりと、広い肩を押してソファの背もたれに押しつけた。

「てめ、なに・・・を・・・」
「いや、さすがに我慢の限界で。―――ちょっと、クスリを盛ってみたんです」

無味無臭だけど、よく効くでしょ―――シャマル特性ですから。
無邪気ささえ感じられる綱吉の言葉に、スクアーロは思いっきり眉間に皺を寄せて、のし掛かってくる恋人を睨め付けた。
もう、人一人分を払うだけの力はない。―――正確に言うと、すべての神経を、今にも切れそうな理性を保つのに使っているため、体を動かせないのだが。

「そこをどけ、ツナヨシ」
「どきません」

スクアーロの膝に跨るように乗り上げた綱吉は、指通りのよい銀髪を指に絡めながら、端正な顔に口づけの雨を降らせる。
その吐息がいつもより熱い。
見れば、綱吉のグラスも空になっていた。

「ぅお゛い、まさかっ」
「・・・さすがに、俺も素面じゃできないし、こんなこと」

スクアーロが悪いんだ、なかなか手を出してくれないから。
キスの合間に拗ねた口調で囁かれ、潤んだ瞳で睨み返されて、スクアーロの理性がもろもろと崩れていく。

「おまえ、なぁ・・・」
「だって・・・だっていっつも、俺からばかりでずるっあっ」

困ったようにスクアーロが伸ばした手が、綱吉の腕にスーツ越しに触れた瞬間、綱吉の口から切なげな音が漏れた。

それが決定打。

プツンと小気味いい音で切れたスクアーロの理性は、それからしばらく戻ることはなかった。








「あっ、ひぃうっっやぁ・・・っ」

ぐちゃぐちゃと、卑猥な音が、豪奢な居室に響く。

毛足の長い絨毯の上に転がされた綱吉は、向かい合うような形でスクアーロに貫かれていた。
もう何度達したか分からない下肢からは、どちらのものとも知れぬ体液が、綱吉の羞恥心をかき立てるように動きに合わせて音を立てた。

長い銀色の髪が、時折綱吉の胸の上を滑って、はだけたシャツからのぞく淡い色の二つの突起に当たる。
そのたびに、スクアーロを受け入れている場所が無意識に締まって、中のものの形をより鮮明に伝えた。
それが更なる快感を生み、脳内をドロドロと溶かしていく。

「やんっ・・・はぅっうん・・・・ひああっ」
「わかるか、ツナヨシ。お前の中の俺が」
「んんっだめ、あ、あ、あっ」

綱吉が、絨毯を手が白くなるほどに握りしめているのを見て、自分の首に回してやる。

「やぁっうそぉっ・・・ふか、いよぉ・・・っ」

スクアーロに縋ったせいで、微妙に突かれる位置が変わり、脳天を突き抜けるほどの愉悦が綱吉を襲った。
自重で、更に奥を貫かれる体勢になったのである。
襞の収縮でそれに気付いたのか、スクアーロはニヤリと笑って、何度も同じところを狙って腰を動かしてきた。

「ふぁっあんっ、それ、だめっ、だめぇっ」
「何がだめなんだ?ツナヨシ。・・・ここ、好きなんだろ?」
「そんっなっ・・・ひぃあっ!」

低く囁かれながら耳元を舐められて、華奢な体がびくんっと跳ねる。
それと同時に、綱吉の内部が今まで以上にきつく収縮し、生暖かい体液が二人の腹を濡らした。

「なんだ、耳でイっちまったのかぁ?」
「あ、あ、あ・・・」

すでに数回目の絶頂を極めた体を受け止めてやれば、上気した肌から、とろけるような甘い香りがする。

その香りに誘われるように、再びスクアーロは動き始めた。
達したばかりで、更に敏感になった綱吉は、その動きに再び快楽を呼び覚まされて、泣きながら声を上げる。

「も、やあっおかしくなる、からぁあっ!」
「なればいいじゃねぇか。俺なんざ、ずっと前からおかしくなってんだぜぇ」
「んんっふぁあ、あむぅっ」

スクアーロに貪り付かれて、喘ぎさえも根こそぎ奪われながら、綱吉は更にスクアーロにしがみつく。
それに気を良くしたらしく、悪戯な手が、すでに起ち上がりきって涙をこぼす下肢を擦り上げ始めた。
貫かれたまま前を攻められて、綱吉は、涙をこぼす琥珀色の瞳を大きく見開き、いやいやをするように頭を振った。

「あっだめっそんなの、むりぃ!!ほん、とにおかしくなっちゃうからぁぁっっ!!!」

とろりと、少し色の薄くなった粘液が、スクアーロの手を汚す。

「薄いな・・・何回目だぁ?」
「も、わかんなっああっ」
「俺はまだ一回しかイってねぇっていうのに、しょーがねぇボスだぜ」
「いじ、わるっ・・・んんっあぅっっ」

愛人の抱えている数が違えば、踏んだ場数も違う。
いくら催淫剤に煽られたところで、経験の差はいかんともしがたいのだ。

「すく、あーろっ・・・俺、気持ちよくない?俺じゃイけない?っひぅっんっ」

最早、正常な思考さえも快感に飲み込まれた綱吉が、拙い口調で、幼子のような仕草で口を開いた。
スクアーロとて、その壮絶な色香に何度達しそうになったかわからない。
―――達したところで、一回や二回の射精では、スクアーロの中に巣くう熱は下がりそうになかったけれど。

それでも達するのを堪えたのは、少しでも綱吉を感じていたかったが為である。

だが、こうまで誘われては、そんなことをいっている場合ではない。

綱吉の象牙色の肌は桃色に上気し、その肌の至る所に所有の花びらを散らせ、快感に体を震わせている。
なにより、スクアーロを受け入れている蕾の収縮に、そろそろ忍耐の限界を迎えそうだった。

「んなわけ、ねーだろっ」
「っんあああ!」

ずん、とより深く貫かれて、綱吉は体を仰け反らせて嬌声を上げた。

「あ、ひぁあ、あ、あ、ひぃっ」
「どんだけ、俺が、我慢してたとっ」
「だってっ俺だって、スクアーロがっぁああ!ほしかったんだよっ」
「――――っ!」
「あ、あ、ひぁぁっ!」

その言葉と、中の締め付けに促されるように、どくどくと熱いものが綱吉の内部にはき出された。
同時に、華奢な体を震わせて、綱吉も達する。

そしてかくりと鍛えられた胸に倒れ込み、そのまま綱吉の意識はブラックアウトした―――。




「―――ん・・・」
「お゛ぉい、目ぇ覚めたか?・・・水、飲むか?」

夜明け前の一番暗い時間帯。
泥のような眠りから覚めた綱吉は、自分を包み込むように抱き締め、同じように寝台に横たわる男を見て不思議そうな顔になる。

「すく・・・あーろ・・・?なんで・・・」
「なんでって・・・そりゃ、お前・・・」
「・・・?―――あ」

決まり悪そうに視線を逸らしたスクアーロを見て、やっと、自分の体が怠い理由を思い出した。

「・・・」
「・・・」

しばらく、部屋に言いようのない空気が流れる。

「ツナヨシ・・・もう、あんなことは止めろよぉ?」
「・・・っ俺とするの、気持ちよくなかったってこと?もう、俺とはしたくなってこと?」

沈黙を破ったスクアーロの言葉に、綱吉は微かに涙目になりながらそう問うた。
すると、銀髪の暗殺者は、その端正な顔に呆れの表情を浮かべて否定の言葉を口にする。

「うお゛ぉい、なんでそうなる」
「だって・・・いつも、俺ばっかりスクアーロが好きみたいで・・・。そりゃ、貴方が恥ずかしがり屋なのは分かっているけど・・・」
「・・・――――悪かった」
「・・・」
「お前に手ぇ出さなかったのは、抱きたくないとかじゃねぇぞぉ。・・・ただ・・・」
「ただ?」

真っ直ぐに、答えを求めて向けられた瞳に、スクアーロは溜め息を吐いて白旗を振った。

「ただ、一回抱いちまったら、もう歯止めが効かなくなると思ったからなぁ。―――お前が、誰かと話してるのにさえ我慢出来なくなっちまう。お前の愛人なんて、皆殺しにするかもしれねぇと思ったから―――」
「・・・スクアーロ」
「俺は最悪な男だと思うぜぇ?嫉妬深ぇし、独占欲も人並み以上だしなぁ・・・。―――もう逃してやる気もねぇけどよぉ」

ぎゅっと、抱き締める腕に力が篭もった。
それに応えるように、綱吉もその鍛え上げられた体に腕を回して、とろけるような笑みを浮かべながら囁く。
きっとこれから先、この腕から逃れようとしたら、容赦なく鮫の牙が自分ののど笛を食いちぎることを確信して―――。

もう貴方は、俺のもの。
俺が貴方のものであるように、ね。

「俺だって、貴方が思うほど良い子じゃないんだよ?・・・こんな風に―――クスリ使って襲ったりするし」

―――ねえだから。


恥ずかしがらないで。

もっと愛して。

もっと求めて。

もっと溺れさせてよ。

じゃないと、襲うよ?


fin.


尻切れトンボな感じになってしまいました・・・。
襲い受けにしたかったのに、ただのスクアーロヘタレ物語に・・・orz
そしていつも以上に意味不明・・・エロの道は険しいっす。。。


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