お届け物です。


高い天井には、ヴェネツィアングラスのシャンデリアが、堂々とした美しい佇まいながら柔和な光で室内を照らしている。
白に近い、淡いベージュの壁には、誰の趣味かは知れないが、抜けるような青空や、深い森の湖畔といった美しい風景画が、精緻な細工の銀の額縁に飾られていた。
足が埋まるような毛足の長さはないが、十分柔らかい絨毯は、シミどころか埃一つなく落ち着いた色でそんな部屋(綱吉の間隔から言えば広間)の色調を整えている。
けれど、その部屋の奥には、ドアノブの無い大きな扉があって。
それが一種異様な雰囲気と佇まいで、部屋の様子を風格や気品がありながら不可思議なものへと変えていた。

そんな部屋の主は、部屋の風格に負けぬ美貌を来客へ向けると、典雅な仕草で一礼した。

「お初にお目にかかります、十代目」

綱吉は、自分の横に立っているディーノを幼くして、もう少しだけ瞳を切れ長にしたような少年に流暢な日本語で挨拶され、一瞬驚いたようにたじろいだ。
けれど、すぐに破顔して、同じように挨拶をし返す。

「はじめまして、俺は沢田―――」
「名乗っていただかなくとも、存じております」

少年はあっさりとそう言って、その蜂蜜色の瞳を、少年の対応に眉を顰めたディーノへ向けた。

「すでに、本城へ続く回廊は開いております」
「ああ。―――お前、」
「何か?」

咎めるような口調の当主を遮って、少年は美しいかんばせに、にっこりと笑みを形作る。
それを見て、ディーノは仕方がないという風に溜息をついて、綱吉へ詫びるような視線を向けた。
だが、見遣った先の綱吉は、分家の当代当主のあからさまに慇懃無礼な態度に、不快感どころか安堵をおぼえたらしい。
そういえばそんなヤツだったなぁ、などと、どこか安堵で緩んだ次期当主の表情を見ながら苦笑して、ディーノの大きな手が綱吉の華奢な肩を叩いた。
ツナの左右に立っていたスカルとラルも、そんな父の様子を察して、射るような視線を少年に一瞬だけ向けた後は、非常に静かにしている。

「んじゃ、ツナ、行くか」
「―――はい」

そんな、心のどこかで理解しあっているようなやり取りに、少年は一瞬眉を動かしたが、すぐに口元に笑みを浮かべなおすと、踵を返して背後にあったノブの無い扉へ歩み寄った。
少年が手を触れさせれば、音も無く扉が開いて、部屋とは比べ物にならぬほど素っ気無い石の階段がその奥に続いているのが見える。

「では、どうぞ。僕はこれで失礼させていただきます」

自分の仕事は終わった、と態度で示しながら、最後まで綱吉と視線を合わせることなく少年は部屋を出て行った。

「悪いな、別に、いつもああなわけじゃねぇんだが」
「あ、いいんです、むしろ安心しました」

綱吉は、年長の当主に続いて足音を吸収してしまう絨毯の上を歩きながら言葉を紡ぐ。

「だって、反感を持ってくれるっていうことは、自分の意思を持ってくれているということでしょう?」
「まぁなぁ・・・」
「俺だって、今まで会ったこともない人間に、自分の人生左右された挙げ句これから一生付き合っていかなきゃいけない、なんて言われたら、さすがに嫌ですもん」
「―――そうか」
「さっきの子、ディーノさんに似てたってことは、キャバッローネの・・・」
「あぁ、今の当主だ」
「そうですか、じゃぁ、今度きっちり自己紹介してきます」

二つの硬質な足音が扉の先の空間に響くと、ゆるゆると音も無く扉が閉まった。
光源のない石の部屋は、鼻をつままれてもわからないほどの暗闇に満たされたが、不思議と綱吉は恐怖感を覚えない。
前を行くディーノの気配があったし、教えられずとも、此処は獄寺のテリトリーだと肌が感じ取っている。
しかも、左右から小さくも暖かかく心強いこどもの手が、綱吉の両手をしっかりと握っているのだから。

一歩ずつ足を前に踏み出すたびに、固くも柔らかくもない不思議な感触が足の裏から伝わってくる。
今、自分がどこに向かって歩いているのか、深い闇の中に紛れて狂ってしまった感覚ではわからない。
だが、頭のどこかが、このまま歩けば大丈夫だと言っていた。

まるで、故郷に帰るような、不思議な感情が胸に宿る。
行ったことも、見たことすらない場所に向かうのに。

「Padre」
「ん?なに、ラル」

綱吉は、ささやかな声に呼ばれて、見えはしないが確かに横で手を繋いでいる子どもを見遣った。

「どこか、痛いのか」
「え?」

その問いかけに答える前に、視界に光が差し込んで、ゆるゆると闇が背後に退いていく。
差し込んだ光の眩しさに目を眇め、やがて白い光の中に、美しい庭園の中に建つ、古ぼけたレンガ造りの建物が見えてきた。

色鮮やかに咲き誇っている花々や、日の光に青々と茂っている緑、足元には組み合わさった部分にコケが生え積年によって削られた煉瓦の道が、玄関まで続いている。
目の前には、先ほどのキャバッローネの屋敷の豪奢さからは程遠い、非常に小ぢんまりとした3階建ての建物があった。
絵本から抜け出たようなその佇まいは、綱吉の庶民的感覚に近いものがあって、屋根の煙突から今にも柔らかな湯気が出るのではないかと思わせるほどに、のんびりとした雰囲気を纏っていた。

ひどく懐かしい気がした。

何一つ見覚えの無い景色なのに。

くいっと、不意に手を引かれてそちらを見れば、ラルの瞳が心配そうに綱吉を見上げていた。
不思議に思って瞬きをすると、それにあわせたように濡れたような感触が頬を伝う。

「あ、れ?」

悲しくはない。
嬉しくもない。
ただ、懐かしいだけ。
涙を流すほどの感情の動きなど、無かったのに。

はたはたと零れる涙に、綱吉は戸惑って顔を覆う。

「Padre・・・」

そんな父の姿に、ラルは自分と同じように父を見上げている兄弟へと目を向けた。
スカルの濃いこげ茶の瞳も、ひたりと綱吉へ向けられていたが、そこには特に何の戸惑いも見受けられない。
やがてスカルの手が綱吉の上着を引いた。

「おかえりなさい」




見た目よりもしっかりしているらしい建物木の床が、綱吉のスニーカーの下で、タム、と柔らかい音を立てる。
玄関からは、すぐ右手にベージュのシンプルな応接セット、左手に2回へと続く木造の階段、正面奥に食堂らしき広間が見えた。
2階まで吹き抜けになっているため、2階の廊下も玄関から見ることができた。
あちこちにある窓から日の光が差し込んで、年季の入った建物特有の薄暗さを打ち消し、穏やかな空気が流れている。
掃除が行き届いているのか、黴臭さや埃っぽさも無い。
建物の中はしんと静まり返っていて、誰かいるようには思えないが。

「ここが・・・」

涙が乾いて少しパリパリする目を瞬かせながら、綱吉は玄関からぐるりと建物の中を見回した。
ここが、世界に5つしか存在しないウィザード一族の中で、純然たる血統制ではないことを除けば最大勢力を誇る、ボンゴレ・ファミリーの本城。

予想だにしかなったほど、庶民的だ。
少し古い時代の民家か安い宿屋のようにしか見えない。

―――宿屋。

骸が話した昔話に、ボンゴレが最初に本拠地を置いたのは宿屋だった、というのが含まれていたことを思い出して、綱吉は横に立つキャバッローネのブレインをもの問いたげに見上げた。

「ディーノさん、ここは」

ふいっと、頭一つ分高いところから蜂蜜色の瞳が綱吉の琥珀の瞳を見下ろす。
とろりとした金色がかった褐色の瞳には、綱吉の言わんとしたことが正解だとでも言うように、静かな光がたゆたっていた。

「俺達が最初に拠点にしていた場所をそのまま買い取ったんだ。―――此処の宿屋の名前がそのまま俺達のファミリーの名前になってるんだぜ」
「へ?」
「いやーここのあさり料理、結構評判だったんだよ。で、宿屋の主人もそれに気を良くしてボンゴレって名前つけたらしいな」
「で、それをそのままファミリーネームにしちゃったんですか!?」

確かに、ボンゴレ―――というか、あさり、なんて名前、普通の苗字などからでは浮かんでこないような気もするが。

「あ、ツナ、そんなこと言うけどな、それを名前に採用したのはツナだからな」
「―――なんてネーミングセンス・・・」

いや、自分にセンスなぞあると思ったこともないが、だからと言って単純すぎるるのではないか。
がくっと肩を落として溜息をつくと、物珍しそうにきょろきょろと視線を彷徨わせているラルの小さな頭が視界をよぎる。
それに対してスカルは、玄関から動こうとしないディーノと綱吉の間でつまらなそうに腕を組んでいた。

あぁ、そうか。

そんな子ども達の反応の違いに、綱吉はラルがこの本城へ足を踏み入れたことが無いのではないかと思い至る。

「ここには、誰もいないんですか?」
「んーそうだなー公式行事やら一般業務やらは全部さっきのキャバッローネの屋敷でやるから。表向きは、あの屋敷が本拠地ってことになってる。とりあえず、中見て回るか?内装は手を入れてあるから、それほど不便ってわかでもねーからな」

コツコツ、とディーノの革靴が木の床を歩き始めて。綱吉も慌ててそれに続いた。
ラルはそんな綱吉の後についてきたが、スカルは興味が無いのかスタスタと奥の食堂へ姿を消してしまう。
前を行くディーノの、亜麻色のスーツに包まれた姿勢の良い後姿を見ながら、問いかけを続けた。

「じゃあ、ウィザードの研究機関―――とか?」
「いや、それは骸の所でやってる。ちなみに獄寺の屋敷はボンゴレの所有してる場所、建物、空間の管理のためにやたら電子機器がわんさかしてるぜ」
「・・・それじゃ、いったい本城はなんのためにあるんです?」

一族の始りの場所とは言え、厳重な警備体制を敷くほど重要な場所でもない気がするのだが。

「歴代のボンゴレの当主のため、に決まってるだろ」
「え?」
「ここは、全てのブレインが結構な容量を割いて常時認識していた空間だ。しかも本城へ到る道は3つだけ。つまり、完全に俺達がコントロールできて、外部からは殆ど完璧に守られた場所ってヤツだな。だから、ボンゴレの当主はたいてい此処に住んで、公式行事なんかの時にぶらっと出てきてたな。あぁ、もちろん、好き勝手に遊び惚けたりとかもしてたけど」
「コントロール」
「そう。ま、そう大したことはしてないぜ。実際、コントロールなんて“掟”のあるボンゴレには必要ない」

強制力のある単語に眉を顰めた綱吉の気配を背中で察したのか、ディーノは階段を上りながら笑う。

「“掟”は絶対だ。それは、ブレインだった俺達にも破れない拘束力がある」
「それが―――俺の、“理想”ですか」
「ああ。ボンゴレは、ウィザードの暗黒時代以降、ウィザード同士の勢力争いを水面下に押し留められるだけの影響力のある組織になった。初代は、ボンゴレの力を保ち勢力図を安定させること、そのために、無駄な争いを一族内でしないこと、を願ってた。人が、死なない、無用な人殺しをしない、って世界が理想だったんだ。そんな世界がずっと続けば良いってな」

子どもの絵空事みたいに綺麗な理想。
けれど、ザンザスの圧倒的な力の前に疲弊しきったウィザードの誰もが願っていた世界。

だから、多くのウィザードがツナヨシに共感した。
だから、ボンゴレは大きな組織になった。
―――共感によって、その魂をゆるやかに拘束されることに、気付いたときには手遅れで。

ずっと続く理想。
代々受け継がれていく魂の束縛。

ボンゴレに属する誰もが、知らぬうちにその束縛の中で生きている。
抗うという選択肢を、思いつくことも無く。

「まあ、そのおかげで今まで他のファミリーと水面下でやりあうことがあっても、血で血を洗うことは無かったから、“掟”があることは悪いことじゃないと思うぜ」

そう言って肩をすくめたディーノの背中からは、彼の内心がどうなのかまで窺い知ることはできない。
いつの間にか階段を上りきって、綱吉たちは3階へと足を踏み入れていた。
2階はただ通り過ぎただけだったので、それほどよく観察できたわけでもないが、宿屋という建物の使用目的上、3階は不適当な設計を成されているように見える。

階段を上りきってすぐに、扉が一枚だけあった。
それ以外は、左右の壁と天井に窓があるだけの、素っ気無い造りである。

「・・・此処が、当主の部屋ですか」
「あぁ」

カチャリとノブを回せば、広々とした空間が広がっていた。
壁の左右を天井までの高さの本棚が覆っているにも関わらず、扉から向かって正面の壁はテラスへと続くガラス扉になっているため、視界が開けて圧迫感は無い。
左右の本の壁は、扉の形に切り抜かれている以外に隙間がなく、そこに収められている本も整然と並べられている。
テラスに背を向ける形で、正面奥に配置された重厚な執務机。
天井から吊り下げられているヴェネツィアングラスのシャンデリア。
床を覆う、汚れどころか埃さえも見当たらない、暗赤色の絨毯。

―――大学生の書斎にしては、上等すぎる部屋だった。

「向かって左が私室、右が浴室。ちなみに、私室からは俺達の屋敷に行ける扉がある。一方通行で、俺達の屋敷からは行けないけどな」

ぽかん、としている綱吉の反応に笑いながら、ディーノは簡単に部屋の構造を説明した。
それを聞きながら、とりあえず足を踏み出してみる。
先ほどの屋敷と同じく、柔らかいけれど足を取られるほどでもない感触がスニーカーから伝わってくる。
恐る恐る右の浴室の扉を開けば、これまた広々とした白亜の大理石の空間が目に飛び込んできて、琥珀の瞳が戸惑ったように瞬いた。
そのまま扉を閉めて、上手く回らない思考でトイレと風呂場が別だったことと、遠めに見えた浴槽が広々としていたことだけを認識する。

「Padre、大丈夫か?」
「う、うん、何ていうか、この広さの必要性が理解できないというか何と言うか・・・」

きょとん、と見上げてくる子どもに返事をしながら、本棚に据えつけられた大きなテレビの前のソファに腰掛けているディーノへ目を向けた。
特に何をするでもなく綱吉の方を見ていた美丈夫は、その視線に気付いて美貌に爽やかな笑顔を浮かべる。

「どうかしたか?」
「いや、ちょっと、左の部屋を見るのが怖いなと」
「大丈夫だぞーセキュリティは万全だ」

いや、そういうことじゃなく。

思わずそう突っ込みを入れそうになりながら左側の扉を開いて、想像通りの光景に綱吉は溜息をついた。




かつて、炎の暴君としてウィザード界を震撼させ、賢人達の頂点に君臨しようとしていた男は、薄暗い闇の中で無造作に腕を振った。
すると、その筋肉の動きに合わせて粉雪のような炎が舞い上がる。

「ふぅん、力は損なわれてないんだ」

“ヒトガタ”の万力を賭してもビクともしない檻の中からそれを眺めて、マーモンはつまらなそうにそう呟いた。
静まり返った石造りの大広間には、尊大に玉座に腰掛ける男と、大きくも小さくも無いサイズの檻に座り込んだ子ども達しかいない。
男の鋭い眼光が、煩そうに子ども達へと向けられる。

「煩ぇ、カスが」
「そのカスに今や勝てない人間が何を言うんです」
「元々、能力から言えば、僕らの方が上だったしねぇ」
「・・・」

無言で飛んできた灼熱の炎も、男と子ども達を隔てる白銅色の柵の前であっさりと霧散した。

「・・・まったく、技術開発だけは優秀なんだよね、ボンゴレにしてもヴァリアーにしても」

目前まで迫っていた死の光に怯えた様子もなく、マーモンは退屈だといわんばかりの仕草で溜息を吐く。
自分が、その技術開発で生み出された最も象徴的な存在であるという認識は皆無らしい。
その正面に座っていたヴェルデは、その言葉に技術開発者として多少引っかかるものを覚えつつも無言で兄弟の肩越しの光景に目を向けた。

生死を問わなければ、広間には200人あまりの人間が居る。
玉座の男と、檻の中の子ども達を除いて、全て常世には既に存在していないけれど。

「何がしたいんです、僕達を此処に閉じ込めて、自分の手足を全て殺して」
「さぁな」

返ってきた素っ気無い言葉に、ヴェルデは呆れたように頬杖をついた。
昔、別の質問をしたときにも同じ言葉が返ってきたのを、彼の思考回路はきっちりと記憶している。

『何故、ウィザードの王になりたいのですか?』

それは、純粋な疑問だった。
相応の力があって、時機が巡って来たからといって、わざわざ限られた時しか持たない人間が、途方も無く続いていく世界に喧嘩を売ることに、大したメリットは無い。
歴史に名を刻む覇者になりたかったのか、己の力を世界に誇示したかったのか。
ある意味不老不死の存在である“ヒトガタ”の純粋な問いに、今にも世界を飲み込まんとする暴君は素っ気無く返したものだ。

『さぁな』

と。
だから、ヴェルデは時々思ってしまう。
もしかしたら、彼の行動の殆どは無意味なのかもしれない。
行動の対象となる人間にとって自身の存亡がかかった侵略も、行動を起こした男自身にとっては、持て余した力の発散に過ぎないとしたら。

「生きているだけで傍迷惑って、相当ですよね」

まぁ、自分の筋肉の動きを意識するだけで、そこらじゅうに火花が発生するという能力自体が傍迷惑極まりない、と言ってしまえばそれまでである。

「人間なんて、生きてるだけで傍迷惑なヤツばっかりじゃん」
「僕らの“お父さん”もですか?」
「そこで怖い顔して待ち惚けてるヤツとおんなじくらい、厄介だよ」

どこか拗ねたような口調の兄弟に、ヴェルデは形のよい眉を下げた。
再び檻の側面に焔が上がったが、中にいる子ども達はそれをあっさりと黙殺する。

「確かに我が儘で甘ったれで、そのくせ変に思い込みが激しくて頑固ではありますけど」
黙殺したまま理知的な、けれど子ども特有の澄んだ声で、子どもは言葉を続けた。

「それでも愛しくて、欲しくてしょうがない。―――おや、確かに、厄介ですねぇ」

今や記憶に遠い“父”を思い浮かべて、ヴェルデは言葉に反して穏やかな笑みを浮かべる。
それを、目深にかぶったフード越しに見ながら、マーモンも同じように苦笑した。

「厄介でしょ?」
「まぁ、“カミサマ”なんてそんなものですよ。僕らは全てをかなぐり捨てて、御前で愛を請うしかない」
「それができなかったから、僕達は此処でこうしているわけ?」
「さぁ・・・裏切ることによる自分と言う存在の主張、侍ることによる分け隔てない無償の愛の享受、どちらも、“カミサマ”にしてみれば同じなのかもしれません」
「ま、別にどうでもいいんだけどさ」

そんな問答はし飽きたとばかりにフードをいじりながら、子どもは先ほどから沈黙している玉座の男へ目を向ける。

「で、待ちに待ったツナが来たら、アンタはどうするのさ?」




Next
Back